今やカラオケ人口は4500万人を超える。とはいえ、多くのカラオケ愛好家の最大の悩みといえば、「いかにうまく歌うか」に尽きるだろう。今回は、『カナダからの手紙』などのヒット曲でお馴染み、歌手・作曲家の平尾昌晃氏が、カラオケの極意を教えてくれた。以下、平尾氏の解説だ。
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いま私は都内で音楽スクールを開いているのですが、カラオケ好き中高年の方々が知りたがるのは、キレイな発声法はもちろんですが、突き詰めれば「どう歌えば“さま”になるか」ということなんですね。
で、これはいくつかあるコツをマスターすればさほど難しいことではありません。キーワードを並べると次の5つです。
【1】情景を思い浮かべる
【2】メッセージは一人のターゲットを決める
【3】ベースの音をよく聞く
【4】歌詞の「色変わり」を追う
【5】デュエットは耳をステレオにし、目線を交わらせる
「情景を思い浮かべる」というのは、歌う本人が曲の内容、そこに描かれている情景を頭に浮かべながら歌うということですね。実はこれをやっていない人が非常に多い。漫然と歌詞を声に出していると、聞く人がグッと来ないんです。メッセージを発する本人が歌そのものをちゃんと理解するということですね。
また、歌のメッセージを、聞く人の「耳」ではなく「心」に届けるためには、自分の中で、聞かせるターゲットを一人に決めることが肝心です。恋の歌なら目当ての人ひとりに向かって歌うわけです。これを意識すると全然違う。感情も込めやすいし、受け取る側にも伝わりやすい。
さらにテクニック的なことでいうと、曲の流れを見失った場合は、オケのギターでもドラムでもなく、ベースの音を追うといい。一番聞きやすく、メロディの軸を作っている楽器はベースなんです。この音を掴まえてリズムをそこに合わせるとズレません。
また、どうしても音程が取れないという方は、いきなり歌詞を歌うのではなく、カラオケ音をバックに、「ルルルー」とハミングで練習してみるのも効果的です。
また、カラオケ画面に出て来る歌詞はメロディに合わせて発声部分の色が変わっていきますよね。あれを無視しないこと。下手な人に限って、色のリードを無視して歌う。実は、あのリードは極めて正確に作られています。信頼してあの通りに歌うのがミソですね。
最後はデュエットのコツ。デュエットの指導のときはいつもいっているのですが“耳をステレオにする”のが大事なんです。一方の耳で自分の歌を聞いて、もう一方でパートナーの歌を聞く。決して独りよがりにならないということですね。
それから、目線です。2フレーズに一度くらいの頻度で、パートナーと1秒ほど目線を交わらせましょう。これをやると、すごく雰囲気がでるんですよ。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2010年9月24日号