日本の政治の混迷が続いているが、『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『海のトリトン』ほかの作品で知られるアニメ監督の富野由悠季氏が「言わずに死ねるか!」と地に足がつかない政治家たちへメッセージを送る。
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僕はアニメーション制作という「絵空事」の世界で生きてきたから、実業の世界は詳しくない。とはいえ、だからこそ見える日本の問題点があるとも思っている。 日本人に圧倒的に足りないのは、物事の判断能力だ。特に福田康夫首相が辞任したあたりから、政権交代した現在まで、指導者である首相たちのビジョンが見えてこないと感じる。
彼らからは国家論どころか、人物としての覇気が見えない。鳩山由紀夫氏や菅直人氏の表情をテレビ越しに見て、首相になったとたんに生気を失い、うつろな表情になっていくのには参るし、代表選レベルの各論になると、空論を声を大にして喋れるというのはどういうわけか。
「貴兄たちには国家指導の理念がない」と断ぜざるを得ない。
※週刊ポスト2010年9月24日号