最先端の医療技術と高い衛生観念を持つ日本。ところが、そのことが逆に「殺人細菌」発生・感染のリスクを高めているとすれば皮肉としかいいようがない。
抗菌剤が効かない「スーパー耐性菌」がインドやパキスタンで拡大中だが、日本でも殺人細菌が大感染を引き起こす危険がますます高まっている。帝京大病院でやはり抗菌剤が効かない多剤耐性菌「アシネトバクター」で9人以上が死亡したのは、その“序章”かもしれない。
池康嘉・群馬大大学院教授(細菌学)が解説する。
「治療に抗生物質を多用するうちに、病原菌が遺伝子を変異させ、抵抗力を持ったものが耐性菌です。インドで発生した『スーパー耐性菌』も抗生物質の乱用が原因と見られています。正確なデータはないものの、近年の日本人の抗生物質消費量は世界でトップクラスになっていることは間違いない。不必要な使用を抑える措置を講じなければ、日本での新たな耐性菌発生の懸念は高まるばかりです」
※週刊ポスト2010年9月24日号