昨今刑事ドラマは「戦国時代」と呼ばれるほど盛り上がっている。だが、多くのドラマは「マジックミラーが大き過ぎる」「本庁警部が所轄に傲慢なことは珍しい」など、突っ込みを入れたくなるものも多い。そんな中、警察インサイダーが疑問符をつける刑事ドラマが多い中、渡瀬恒彦ら個性的なキャラクターがぶつかり合う本格刑事ドラマ『新警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系)らは、全体的にリアルと好評だ。ライターの池田道大氏が現役&元刑事の分析をもとにレポートする。
******************************
元警視庁捜査二課管理官の萩生田勝氏はこういう。「このドラマは地味だけど、本当の警察に近いと思います。第8話では、捜査時に刑事は必ず2人1組で動くという原則がきちんと守られていた。ただ、捜査本部が立ち上がると基本は本庁の刑事と所轄の刑事がコンビになります。ドラマでは所轄同士が組になっていたのが残念ですが、刑事たちが何度も地取り捜査をする場面などは嘘がないと思いました」
個性派俳優の堺雅人が、昼は温厚だが、夜は一転して悪に鉄槌を下す『必殺仕事人』のような刑事を演じる『ジョーカー』(フジテレビ系)では、初回に古びた警察署が登場した。元警視庁警部補で警察評論家の犀川博正氏が評価する。
「乱雑な室内、古くて汚い建物など警察署が相当リアルでした。課内は天井がむきだしで、空調のパイプも見える。古手の警察官には懐かしいシーンでしょうね。この作品では深夜まで捜査して、署内の薄暗い武道場でゴロ寝するシーンもリアルでした」
その『ジョーカー』は、海外ドラマの影響も指摘される。アメリカTV事情に詳しいライターの池田敏氏が言う。
「生まれついての殺人マニアの警察官が主人公の米ドラマ『デクスター』に似ています。“善と悪にどう折り合いをつけるか”という主題も共通点ですね。もともと日本の警察ドラマは海外からの影響が強く、上戸彩主演の『絶対零度』(フジテレビ系)は、未解決事件を扱う米ドラマ『コールドケース』の設定に酷似していました。『警視庁継続捜査班』(テレビ朝日系)も同ドラマを意識しているでしょうね」
※SAPIO 2010年9月29日号