「政治とカネ」の問題で権力闘争が続く日本の政界だが、注目すべきは今まで表に出ていなかった小沢一郎元民主党代表の妻・和子氏名義の巨額の資産や預金だ。小沢氏の妻である和子氏は、新潟県に本社を置く中堅ゼネコン福田組の福田正・元会長の長女である。元会長は田中角栄の後援会「越山会」の最高幹部の一人であった。小沢氏が最も恐れるのはその資産の全体像ではないか、とジャーナリストの松田賢弥氏がリポートする。
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陸山会と小沢夫妻の資産形成は密接に絡み合っているのではないか。その顕著なケースは小沢の地元、岩手・水沢の物件にあった。
小沢の実家付近に地元後援会員らが「小沢会館」と呼ぶ2階建ての建物がある。登記簿によると和子はこの土地建物を81年1月に取得。取得にあたって岩手銀行は和子と小沢を連帯債務者として4200万円の抵当権を設定している。3年後の1984年11月に抵当権抹消、借金は弁済していた。問題は、その先にあった。
15年後の1999年11月、信じ難いことに、小沢は陸山会のカネで、この物件を和子から購入していたのだ。取得金額は和子の取得時と同じ4200万円。つまり、陸山会のカネで、身内の物件を購入したのである。和子が4200万円で取得した物件を陸山会が同じ金額で取得するというのは、常識的にはあり得ないことだ。
15年も経てば、当然、老朽化は避けられず、不動産価格は下落する。差額分は、政治団体の資金が和子の懐に入ったことになる。小沢は政治資金で、和子名義の不動産を自分名義に書き換え、「陸山会」の所有物だと主張しているわけだ。
これは、小沢が政治資金をいかに公私混同して使っているかを知り得る最たる例だ。和子名義の資産は他にもある。
ロッジ風の瀟洒な別荘が立ち並ぶ、長野県茅野市にある高級リゾート「東急リゾートタウン蓼科」の中にそれはあった。登記簿によると、木造平屋建てで床面積67.07平方メートルのこの別荘は和子が水沢の「小沢会館」を取得した同じ1981年の7月に購入している。
それだけではない。その前年には房総半島の風光明媚なリゾート地「東急リゾートタウン勝浦」内に白い壁で覆われた2階建ての別荘を購入している。これも和子名義だ。
特捜部は4億円の土地の原資を巡る一連の捜査の中で和子名義の資産に対し捜査の手を伸ばそうとしたことがあった。小沢が最も触れられたくないのは「陸山会」と和子ら家族が渾然一体となった巨額な資産形成ではないか。
(文中敬称略)
※SAPIO 2010年9月29日号