いま、最も視聴率を稼げる男・池上彰さん(60)。温和な語り口調と優しく諭す話法からすると実におっとりとした人物のように見えるかもしれないが、NHK出身の池上さんは過去に「怖い」と他局の記者からいわれたことがあるのだという。
池上さんも記者出身だけに、「警察回り」の仕事は切っても切れないものだが、この仕事は、寝る時間もないほど厳しいもの。日々時間に追われ、スクープを求められ、怒号が飛び交う。いまの池上さんを見て『そうだったのか! 池上彰の学べるニュース』(テレビ朝日系)プロデューサーの丹羽敦子さんはこういう。
「事件の現場で揉まれた人があれだけのソフトな雰囲気をもてるというのはちょっと考えられないですよね」
実際、16年間の記者時代、池上さんもかなりの“鬼記者”だったという。ひき逃げ事件の現場、深夜の山の中で「そこをどけ!」という警察官に「邪魔をするな」と怒鳴り返して、現場の写真を撮る池上さんの姿もあった。
他社が知らないネタをどれだけ掴むことができるか。記者の能力はそこで測られると思い込み、1日24時間、仕事から離れることのない生活を送っていた。池上さんが当時を語る。
「怒鳴ったりはしないけど、かなり厳しかったようなんですよ。私の部下にものすごいタフなやつがいたのですが、その彼が十二指腸潰瘍になりましたから。ずいぶん恨まれましたね(笑い)現場の記者時代は、ニュースが分からない人を見ると、正直なところ“そんなことも知らないのか”っていう気持ちはありました。記者になって12年目、文部省の記者クラブに所属しているころ、ある民放の若い記者からは“質問しづらい”“怖い”といわれてね。これはすごいショックでした」
だが、いまはリハーサルでも「いい質問ですねぇー」を連発するなど、「ソフト」な池上さんであるようだ。
※女性セブン2010年9月16日号