日没後にエンジンがかかり出す夜型タイプを自認するサラリーマン諸氏は多い。元来人間に備わっている時計遺伝子には個人差があるとはいえ、生まれつき体内時計が昼夜逆転していることはない。睡眠障害患者が多数訪れる、むさしクリニックの梶村尚史院長(精神科・心療内科)はこう解説する。
「時計遺伝子は、約25時間周期で動いている。つまり日周リズムとは1時間の時差があります。通常、この“時差”は起床時に太陽光を浴びて脳の視床下部が刺激されることでリセットされる。けれど、生活が不規則だとリセットの時間が次第に後ろにずれ込み、時差が積み重なることで夜型に移行していきます」
そして、梶村院長は警鐘を鳴らす。
「体内時計を保つには、起床時間を一定にしてたっぷりと朝日を浴びることに尽きます。7時起床11時就寝のような理想的な生活を続けるのは難しくとも、起床時間だけは早朝で固定したい。平日の睡眠不足を休日に補っても体内時計はリセットされません」
近年、体内時計の調整には、摂食行動も影響を及ぼすことがわかってきた。特に脳の覚醒とともに始動する内臓にエネルギーを補給するためには、朝食をしっかり摂る必要があるという。
食と体内時計の関係について、産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門で生物時計研究に従事する大石勝隆氏が指摘する。
「時計遺伝子の働きによって、体内では就寝中にコレステロールの合成が起こる。直前に夜食などで脂質をとることは、脂質異常症(高脂血症)やメタボの原因をつくり翌朝の目覚めも悪くなります。寝酒も一時的に寝つきをよくしますが、眠りは浅いので体内時計がズレる要因になってしまう」
夜の過ごし方も問われる。大石氏はこう語る。
「夜の光は朝の日光とは違ってマイナスに作用して、中枢時計を混乱させます。深夜に照明の強いコンビニで買い物をすることや、就寝前に暗い室内で携帯やパソコンでメールを打つことは控えるべきです」
夜型人間を卒業するためにも日頃の習慣を見つめ直してほしい。
※週刊ポスト2010年10月1日号