今年の夏はかなり暑かったが気をつけたいのが「夏バテ」ならぬ「秋バテ」だ。新井信・東海大学医学部東洋医学講座准教授は、「夏バテ・秋バテの典型的症状=だるさ、食欲不振、胃腸の働きの低下、風邪症状などには、漢方薬が効果を発揮します」と語る。
漢方は現代医学の主流ではなく、限られた人向けの薬のイメージが強いのも確かだ。効果を疑問視する人も少なくない。しかし、最近の医療現場では、漢方人気が上昇している。
今や漢方薬を処方している医師は83.5%に上り(2008年日本漢方生薬製剤協会調べ)、漢方外来を設置する大学病院も急増している。また、10年前から全国の医学部・医科大学では漢方が教育カリキュラムに取り入れられており、今後、漢方薬を処方する医師はますます増えるだろうといわれている。
吉田祐文・大田原赤十字病院整形外科部長、慶應義塾大学病院漢方医学センター外来担当医はこう語る。
「従来の医療は、夏バテのような疲労や倦怠感には、ビタミン剤や栄養剤の点滴を行なっていましたが、それよりも漢方の方がずっと効果的です。冷房の冷えで腰痛が起きた場合には、体を温める漢方薬でよくなることも多いですね」
一般の治療でよくならない腰痛患者が、漢方で劇的に改善したという例も体験したという。
漢方薬は一般医薬品ではなかなか治せない症例になぜ効くのだろうか。吉田医師が続ける。
「西洋薬が一般に、合成された単一成分からできているのに対して、漢方は有効成分を含んだ生薬=植物の葉、根、茎、果実、鉱物などが組み合わされ、長い歴史の中で効果があるものだけが残り、処方されているものなのです」
※週刊ポスト2010年10月1日号