2004年8月、横須賀市内で自動車の中にいた男性に神奈川県警の警察官が職務質問しようとしたところ、男性が逃走する事件が発生した。パトカーが男性を路地に追い詰めたところ、自動車をパトカーに何度もぶつけて逃走を図ったため警官は発砲することを男性に警告。だが行為をやめなかったため威嚇射撃をすることなく肩を狙ったところ男性の右脇腹に弾は当たり、男性は下半身不随になった。
この事件の裁判が2009年5月に行われたが、横浜地裁は「発砲前に威嚇射撃を行うべきだった」として神奈川県に1150万円の賠償を命じた。
このように、警官にとって拳銃の使用には慎重にならなくてはならいのだが、警察には「拳銃は取り出しただけでも『報告書モノ』」という掟も存在する。
かつては発砲する場合、「撃つぞ」と警告することが義務付けられていた。だが、警察官の殉職が相次ぎ、01年からケースによっては予告なしで発砲することが許されるようになった。
元警察官のジャーナリスト、黒木昭雄氏は「拳銃の取扱いには、『けん銃警棒等使用および取扱い規範』という細かい規則があり、実際に使用した時はもちろん、なにかのはずみで職務中に拳銃をケースから出しただけでも、基本的には報告書を書かなければならないし、厳しく説明を求められることになる」とその鉄の掟を説明する。
※SAPIO 2010年9月29日号