いろいろと生活に制限の多い警察官だが、家族もけっこう大変らしい。「サラリーマン社会でも社宅はいろいろと面倒があるでしょうけど、警察の家族寮はそんなもんじゃないんですよ」と語るのは、ある警部補の妻である。
「家族寮で、出世するたびに旦那さんの制服を目立つところに干している奥さんがいたんです。制服で階級がすぐわかるから、“あ、警部になられたんですね、おめでとうございます”なんて言わなきゃいけない」
この微妙な上下関係は子供の世界にも影響する。警部補の子供が巡査の子供と遊ぶ時に“ドロケイ”をやったら、必ず巡査の子供が泥棒役にさせられる─なんてのは当たり前の光景だとか。
別の巡査部長夫婦は、そうした近所付き合いが嫌で、最近、民間マンションに引っ越した。すると、新たな問題が……。 「同じマンションの人に警察官だということを知られて、たとえば、ゴミ出しや上の階の騒音問題とかのトラブルを解決してくれって相談に来られて、困りました。
ひどいケースでは、“ウチの夫が交通違反しちゃって。もみ消せない?”なんて言ってくる。そんなことできるわけないのに!」(巡査部長の妻)
こんな感じだから、奥様方は、ご近所さんに「旦那さんの仕事は何?」と聞かれたら「地方公務員です」と答える人が多いという。
他にも「プライバシーがない」と嘆く妻も少なくない。西日本で勤務する巡査部長の妻。 「家を買う時も、どこにどれぐらいの家を買うと上司に報告しなければならないし、定期的に、生活指導の一環として自己申告表も提出させられる。それには、銀行の預金残高とか住宅ローン額、生命保険額、趣味なんかも書かされます。上司の方にそれを全部知られていると思うと、ちょっと気持ち悪いのですが、この世界はそれが当たり前なので、しょうがないですね」
独身女性たちにとって「警察官」は堅実で結婚相手として理想の職業のひとつに挙げられているが、こんな裏事情を知ったら、敬遠されてしまうかも……。
※SAPIO 2010年9月29日号