金城一紀の原案・脚本、V6・岡田准一主演によるTVドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』は、深夜ドラマとしては異例の高視聴率を獲得。そして、同作の劇場映画第1弾『SP 野望篇』が10月30日に公開されるなど、“SP”という存在に注目が集まっている。さて、このSP、一体どうすればなれるのか? 同作の警護技術監修担当の木本亮氏に教えてもらった。
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まず、現実のSPへの道のりを説明しましょう。警視庁入庁後に他の警察官と同じく、例えば地域課や機動隊に配属された後、そこからSPを志願するケースが多い。実際、SPの約8割が機動隊経験者といいます。
志願といっても警護講習に受講申請を提出し、「巡査部長以上」「身長173cm以上」「柔道又は剣道3段以上」という基準を満たした人材が、SP候補として3か月ほどの訓練を受けることになります。成績優秀者は、一旦配属先に戻るものの、(チャンスがあれば)次回の異動で警護課に配属される。選ばれし精鋭というわけです。
警護講習は教官から“動く盾になれ”“国の盾になれ”と教育される独特の世界なのですが、金城先生の作品の何がリアルかというと、そのSPマインドを見事に作品の中で表現しているんです。
今秋の映画でもそれはいかんなく発揮されています。詳しくは本編を見てのお楽しみですが、主演の岡田准一さんと真木よう子さん演じるSPたちがマルタイ(警護対象)である政府要人を官邸まで送る途中、難局に遭遇しながらも切り抜ける場面があるんです。
そのシーンの後に、主人公はベストを尽くして警護し、目的地まで送り届けたにもかかわらず、「申し訳ありませんでした」と謝るんです。謝られたマルタイは驚きの表情を見せます。
なぜ謝ったのか。
こういったところで金城先生はSPマインドを細かく表現されていると思うんです。SPの本質は暴漢対策や弾除けだけではありません。SPの本当の任務は、マルタイをあらゆる脅威から警護すること、つまり「何も起こさせないこと」が最善の仕事になるんです。マルタイを難局に遭遇させてしまったこと自体が謝罪に値するという感覚が、SPの本質なのです。マルタイが道でつまづいいても、極端な話、選挙で票を減らしても、SPの責任となる。それほどシビアに結果を受け止めなければ務まらない。
※SAPIO 2010年9月29日号