やっぱり男は戦争映画が好きなのだ。各界の映画通30人に忘れられない名作・大作・傑作を選んでもらい、ランキング化した。洋画部門の1位に輝いたのは『戦場にかける橋』。福井晴敏氏(作家)に聞いた。
【あらすじ】
第二次大戦下のビルマ・タイ国境の日本軍捕虜収容所に、河に橋梁を架ける命が下る。将校捕虜は抵抗するも、労役が訓練になると考えて受け入れる。次第に建設に生きがいを感じる捕虜たち。しかし、英国軍による橋梁爆破の作戦が進められていた。
【福井氏による解説】
どちらかと言えば、これまでの戦争映画は、最初から善悪がはっきりとしていた。ところが、この作品は敵味方の両軍を公平な視点で描いている。私にとって、こんな戦争映画は初めてだった。
さらに斬新だったのは、戦争映画につきものである勝ち負けのエンディングではなく、双方とも傷ついて負けに等しい終わり方をしたことだろう。英国軍捕虜が建設した橋が英国軍によって爆破されるわけだが、『本橋梁は英軍将士によって建造されたものなり』と記された看板だけが残るシーンに戦争の無益さが集約されている。反戦映画は数あるが、どの映画もこのシーンのメッセージ性には敵わない。
個人的には、イギリス映画にもかかわらず、全体的に日本の軍人の立ち振る舞いがきちんと描かれていた点も評価したい。橋梁建設の労役をめぐって、捕虜収容所所長とイギリス将校捕虜が根比べをするくだりは、日本人の武士道とイギリスの騎士道の対決のようで見応えがあった。
※週刊ポスト2010年10月8日号