ジャーナリスト・櫻井よしこ氏は尖閣諸島をめぐり次から次に理不尽な要求を畳みかける中国の「中華帝国的侵略手法」を危惧する。
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中華帝国的思考のもとでは、現実、歴史的経緯、慣習などは意味をなさない。そのことは例えばチベットを見ればわかりやすい。かつてチベットは中国に属したことなど一度もない独立国家であった。中国国家からは「藩部」という位置づけで、中国と対等の「同盟国関係」にあった。しかし、後に突然その関係を反転させ、自らを「チベットの統治者」といい出し、「解放」と称して軍事制圧。いまなおチベットの人たちを激しく弾圧し、支配しているのは周知の通りである。
中国は1992年に南シナ海の西沙、南沙、東沙、中沙諸島のすべてを自国領だと一方的に宣言し、中国領だと明記した「領海法」を制定した。無論、南シナ海のそれらの島々に、中国が自国領だと主張できるような事実はない。
しかし、1995年にはフィリピンが領有していた南沙諸島のミスチーフ環礁を占領。70年代に侵出した西沙諸島周辺海域には中国海軍の軍艦を常駐させ、昨年11月には2つの島に中国共産党組織の村委員会の設置を決めた。
まず自国領だと「宣言」し、法律をつくる。中国の漁民、もしくは漁民を装った軍人をその島々や海に侵入させ、相手国が異を唱えれば、中国の国内法をもとに領有権を主張し、軍事力で相手を排除し、支配を既成事実化する。これが典型的な中華帝国的侵略手法なのである。
※週刊ポスト2010年10月8日号