NHKの朝の連続テレビ小説史上最低の視聴率14.8%というスタートを切った『ゲゲゲの女房』だったが、じわじわとファン層を広げ、9月25日の最終回まで視聴率は好調なまま終了した。
そんな『ゲゲゲの女房』の松下奈緒(25)演じるヒロイン・布美枝は、これまでの朝ドラに比べるとかなり異質なタイプともいえる。
NHK朝の連ドラの歴代ヒロイン像について、作家の青木るえかさんは、こう分析する。
「20年以上前は、戦争の時代に波瀾万丈の一生を送るヒロインが多かった。それ以降は現代を舞台にすることも増えましたが、ヒロインが、“私、頑張る”というドラマばかりでした」
しかし、『ゲゲゲの女房』のヒロイン・布美枝は、これまでのヒロインのように夢を叶えるために社会に出て働くのではなく、専業主婦として家庭を守る。そして、漫画に命を懸ける夫を健気に支えるのだ。作家の麻生千晶さんは、『ゲゲゲの女房』のヒロイン・布美枝を、このように分析した。
「これまでの朝ドラは自ら道を切り開く『女の一代記』的なヒロインが多かったけど、布美枝さんは夫を立てて生きる糟糠の妻。芯の強さ持ちながら、妻となったからには夫とともに生きることに幸せを見いだし、淡々とあるがままを受け入れて生きる姿が印象的です」
また、番組チーフプロデューサー・谷口卓敬さんは、これまでとは異なる布美枝の人物造形に込めた思いを語る。
「夫のそばで彼を支えることが彼女の役割で、自分から積極的なアクションを起こしたりはしない。来るものを受け止め、そして受け入れるということ。アクションよりもリアクションに彼女の本質があり、そこに魅力をもたせたかった。従来のまっしぐらなヒロインとは一線を画した主人公をつくり上げたいという大きな狙いがまずありました」
史上最低の視聴率から脱却し、人気を獲得した裏には、こんな自然体のヒロイン像があったというわけだ。
※女性セブン9月30日・10月7日号