リクルート事件に揺れた1989年のニッポン。4月1日に消費税3%導入となったが、その直前、自民党政調会長だった渡辺美智雄氏(みんなの党・渡辺喜美代表の父)が、“消費税反対”の声にどう答えていたか。2010年、消費税増税に揺れる日本にとっても参考になる意見があるかもしれない。(週刊ポスト1989年3月31日号より)
――国民が消費税の見直しや廃案を求めているのは、税金をとられるのが嫌だという理由からだけではない。要するに、“リクルート汚染”された政治家たちが作った消費税を認めるわけにはいかない、もう一回、見直せということだと思うが、どうか。
渡辺「廃案だなんていうのは、ナンセンスですよ。消費税を導入する根本というものを考えてもらわんといかんのであって、今起こっている現象的な部分だけを考えちゃいかんのです。
要するに国というのは行政経費がかかる。それを今までは法人税と所得税に頼ってやってきて、それでも足りない分は借金でまかなってきた。今やその借金の金利が税収の25%にも達している。
サラリーマン減税はしなきゃならん、社会福祉も維持していかなきゃならんという状況で、じゃ、その財源をどこに求めるのか。法人税も所得税もこれ以上上げられないんだから、それなら消費税を導入して、みんなで少しずつ出しましょうといってるわけです」
――動機はよくても、そのやり方に、今、国民は怒っているわけだから、見直すのが当然ではないのか。
渡辺「やり方に多少不満はあるかもしれないけど、政治というのは、やはり結果論なんですよ。財源確保をして、高齢化社会のも備えなきゃならない。それには、消費税導入をやるしかないんです。
それにね。誤解を恐れずにあえていえば、政治家は宗教家じゃないんだから、百%きれいにといわれたって、それはもともと無理なんだよ。それじゃ、排気ガスを出す車は一切走るなというのと同じだ。要は、法律に従うという許容限度の中でよりよきものがいいということで、今回のルクルートでは、ちょっとまずいケースもあったかもしれないけど、だからといって、消費税を白紙に戻さなきゃならんという話にはならないと、私は思ってます」