1970年代、経済成長率の悪化に伴い失業率やインフレ率が上昇し、「英国病」とも揶揄されたイギリスが、再び隆盛を迎えることができたのは、マーガレット・サッチャー元首相の手腕によるところが大きかったという。三菱総合研究所時代に、現地ロンドンでその過程を見続けてきたエコノミスト・浜矩子氏がサッチャー氏の手腕を解説してくれた。(週刊ポスト1998年11月6日号より)
79年に政権を手にしたサッチャー元首相は、ただちに英国病撲滅に着手した。
「その手法は、ソフトランディングではなくクラッシュランディング。ハードランディングよりさらに厳しい“荒治療”ともいえるものです。そしてそれを可能とするために、サッチャー首相が政権発足の早い段階から行なったこと、それは英国病を克服するための包括的シナリオを、国民に見えやすい形で提示することでした」(浜氏)
そこで国民に提示されたのは、“しばらくは耐乏生活が続くが、それを我慢すれば、将来的にはこんなにいい生活待っている”すなわち「個人が自分の生活を自由にコントロールできる社会の実現」という具体的な展望であったという。そうしてサッチャー元首相は実際に荒治療を断行し、次々に目的を達成していく。
「一方、日本の政治家といえば、現状から立ち直るための包括的なシナリオの提示ができないでいます。そのため、日本国民としても、一向に再生のシナリオが見えてこないので、ただただ閉塞感に苛まれているのが実情ではないでしょうか」(浜氏)
日本経済が復活するためには、やはり強いリーダーシップを持った政治家の登場が不可欠ということだろう。