「鉄の女」として知られる英国のマーガレット・サッチャー元首相が認知症を患っているというニュースが世界を駆け巡ったのは2008年のこと。長女キャロルさんの手による回顧録で、00年から症状が始まっていたことが明らかになったのだが、彼女のような人ほど、認知症になりやすいのだという。(週刊ポスト2008年9月12日号より)
1982年、アルゼンチンが南大西洋の英国領フォークランド諸島に侵攻した際、時のサッチャー首相は一貫して武力による奪還を唱えた。しかし、閣僚は皆、消極的で、それに苛立った彼女は「わが内閣に男は一人しかいないのか!」と叫んだという。もちろん、一人というのは彼女自身である。
こうした逸話をはじめ、強烈なリーダーシップを発揮して、「鉄の女」の異名を取ったサッチャー氏。認知症に最も縁遠いように思えるが、実は彼女のような人こそなりやすいのだという。
神経内科医で作家の米山公啓氏が解説する。
「サッチャー氏は激高しやすいといわれていましたが、こうした人は血圧が高くなりがちです。ハードワークでストレスも多かったでしょう。高血圧や過度のストレスは、認知症発症のリスクとなります。さらに、政界から引退し、一挙に緊張から解放されたことが影響したとも考えられます。サラリーマンが定年直後に認知症になるケースが見受けられますが、それと同じかもしれません」
「鉄の女」もやはり血の通った人間だったというわけだ。