世論調査といえば、大新聞にとって金看板だったが、その信頼性については、多くの疑念が寄せられている。菅直人首相と小沢一郎氏の民主党代表選挙をめぐる世論調査はその最たるものではないか。
実は、各紙は世論調査で、念入りに「小沢一郎」について質問していた。いつもの「政治とカネ」から始まり、「要職に就かなかったことは良かったか」などだ。朝日と毎日は控えめに1問付け加えただけだったが、読売3問、産経は6問も「小沢関連項目」を設けている。
「小沢嫌いには小沢が必要だ」といわれるが、まさに小沢嫌いの新聞ほど「小沢項目」が多くなる。笑えるのは、読売が「小沢氏が民主党の中で今後も強い影響力を持つか」と訊いたら、68%が「そう思う」と答えている。発足直後の菅政権の内閣支持率は各紙60%台半ばだったからそれより高いわけだ。
井田正道・明治大学教授(計量政治学)は、こう分析する。「本来なら政権発足直後で政策評価などできない段階なのに、各紙の調査では政策への評価が(10から20%台と)低い。それほど期待できないと思われているにもかかわらず、内閣そのものの支持率が高いのは、一連の小沢バッシング報道による刷り込みが、反小沢なら支持する、という“民意”になって表われたとしか説明できませんね」
刷り込む腕力が特に強いのが先の産経と読売だが、ここは右代表で読売の設問を紹介しよう。
「小沢さんは、自らの資金管理団体をめぐる『政治とカネ』の問題で、代表選挙の期間中、強制的に起訴されても、離党も辞職もしないとしていました。この小沢さんの主張に、納得できますか、納得できませんか」
TBS出身で世論調査に詳しい上智大学の渡辺久哲・教授が苦笑する。
「電話調査にしては質問が長すぎます。ここまでくると、『納得できませんね?』という確認作業で、バイアスがかかっているといわれても仕方ないですね」
※週刊ポスト2010年10月8日号