2000年のプロ野球日本シリーズは、長嶋茂雄監督率いる巨人と王貞治監督率いるダイエーの対決となった。この対決は「ONシリーズ」と事前にメディアによって煽られていた。結果的に巨人が勝利したわけだが、ONの当事者二人はどう思っていたのか? 当時の様子を「400勝投手」金田正一氏が二人に聞いた。(週刊ポスト2001年1月1日号より)
金田:「戦ってみてどうだった」
長嶋:「ボクはもう御免。ノーサンキューだね。ON対決は2度とやりたくありません」
金田:「おいおい、そんなにワンちゃんのこと嫌いか」
長嶋:「そうじゃなくて、正直いってやりづらかった。なぜかといえば、ワンちゃんはやっぱり戦友なんです。時代の流れとはいえ、V9時代を築いてきた仲間と勝敗をかけて対決するという環境が、ボクはやりづらかった。正直トーンダウンしました」
王:そりゃ、牙をむき出して闘うわけにはいきませんよ」
長嶋:「あの監督が相手なら牙でも角でも出しますよ。でも、それはワンちゃんにはできなかったね(とキッパリ)」
金田:「あの監督? おいおい同じセ・リーグで日本シリーズはできんぞ。東京・大阪対決か?(笑い)」
長嶋:「ボクがノーサンキューといったのは、勝負の世界ですから勝たないといけないのに、ONは敵であって敵でないから辛いのよ」
金田:「メラメラという気分にならないということか」
長嶋:その通り。しかし、これはナインの陣頭に立つ指揮官としては失格ですよ。これが正直な気持ちですよね」
王:「ボクとしてもミスターと同じ気持ちですが、ナインや後ろについているファンの気持ちを考えると、日本シリーズで巨人に勝って日本一にさせてやりたいね。でも個人的にはミスターと同じで、プレーするのは選手なのに監督ばっかりが注目されて、やりづらかったですね」
金田:「21世紀もON対決で幕開けと願っているファンも多いと思うぞ」
王:「ボクはもう一度対戦し、できればミスターとの対戦成績を1勝1敗にしておきたいという気持ちもあるのも事実です(笑い)」