当初は「9月上旬開催」が告知され、8月になってからは北朝鮮メディアによって「歴史的慶事」と大宣伝されていた北朝鮮労働党の党代表者会。金正恩(ジョンウン・26)が父子三代世襲の後継者として表舞台に登場するものと目され、海外メディアの注目度も極めて高かったが、その晴れ舞台は「ドタキャン」された。この時の北朝鮮国内について、関西大学経済学部の李英和教授はこう説明する。実は、相当国民は怒っていたというのだ。
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各地方・機関を合わせて総勢2000人規模の代表者は、1週間以上も平壌で待ちぼうけを食わされたあげく、手ぶらで地元へと戻ることになった。後継体制作りに向けて労働党の結束を強めるどころか、かえって威信が地に落ちた。
他方、8月下旬から続いた全国的な特別警戒態勢のせいで、一般国民はろくに商売もできなかった。おかげで金正日と労働党は、昨年末の貨幣交換(デノミ強行実施)で不満を募らせた住民から、あらためて父子三代世襲への怒りと嘲笑を買う格好になった。
まさに大失態である。問題は、激甚な副作用を知りながら、あえて党代表者会を延期した理由にある。
「言論機関や専門家はあれやこれやと複雑な解説や分析をしてくれる。だが、さっぱり要領を得ないし、余計に混乱するばかりだ。本当の理由はもっと単純なのに」――こう苦笑したきり、北の内情に精通する消息筋は党代表者会の話題を避けたのだ。
※SAPIO 2010年10月13・20日号