9月上旬の開催が予定されていた北朝鮮労働党の党代表者会だったが、結局9月28日まで延期された。この延期の理由について、関西大学経済学部の李英和教授はこう解説する。
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「9月上旬」の期限が間近に迫った9月13日、ある消息通はこう私につぶやいた。「会議の遅延は金正日の健康状態が良くないせいだ。8月の訪中もやっとの思いだった。たとえ開催したとしても、半日も開けるかどうか」
金正日は唯一存命の党政治局常務委員(朝鮮労働党の最高意思決定機関)である。金正日の出席と発議がなければ、会議が開けない仕組みだ。この煩わしさを嫌う金正日は、党代表者会と党大会の開催をこれまで避けてきた。その代わりに、総勢20人ばかりが密室で好き勝手に執り行なえる国防委員会を新設した。
ところが、金正日が心身ともに病魔に冒されたせいで、後継体制作りに向けた党幹部の人事刷新が急務となり、44年ぶりに党代表者会を開催するはめとなった。その瞬間、会議開催は「金正日の健康問題」という薄氷を踏むことになった。
たしかに、韓国情報機関の元世勲・国家情報院長は、9月13日の国会答弁で「金正日の健康問題」が会議遅延の原因ではないと述べている。だが、これを額面通り受け取るのは天真爛漫にすぎる。
なぜなら、まさにその元氏が、今年6月24日の国会情報委員会(非公開)で、次のような「金正日認知症」の爆弾証言を行なっているからだ。「脳内出血の後遺症で記憶力が落ち、現地指導などで論理的につじつまの合わない話ばかりしている」(7月7日付「朝鮮日報」)と。食い違いは同じ国会証言でも公開と非公開の差によるものだ。公開だと外交的配慮が働くし、情報の出所も問われるから、食い違うだけなのだ。
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もはや隠しきれぬ金正日の健康問題。3年前から金正日の初期認知症をしてきた李教授は「それから3年の歳月は、2年前の脳卒中を経て、認知症の進行度合いを増した」とその容体を説明する。
※SAPIO 2010年10月13・20日号