尖閣諸島での中国漁船による海上保安庁の巡視船衝突事件は、9月24日に船長を処分保留のまま釈放した。これに対し“敗北”外交との指摘もあったが東海大学海洋学部教授の山田吉彦氏はやみくもに敵対感情を募らせるべきではないと指摘する。
「いまの生活は中国製品がないと成り立ちません。ユニクロをはじめ、デフレ経済を支える製品の多くを中国でつくっていますよね。今回、レアアース(希土類)の輸出規制がありましたが、これがないと携帯電話1台すらつくれない。中国にとっても、日本はルールを守り、お金が確実にある客。ただ、今後関係がこじれたら物価上昇で一般消費者の生活を直撃する可能性は充分あります」
経済的損失はほかにもあり、北京市当局が旅行社に訪日旅行自粛を呼びかけ、実際に1万人規模のツアー中止などの形で生じた。急増する中国人観光客の平均消費額は約14万円。個人消費の低迷する日本の救世主とみなされ、百貨店、家電量販店は対中国人サービスの充実に注力していた。
世界で5人に1人が中国人という時代、無視できない存在だ。しかし、明らかに中国の圧力に屈した形となった今回の対応。今後の日中関係に大きな影を落としてしまった。
※女性セブン2010年10月14日号