聖路加国際病院理事長の日野原重明氏は、1911年に生まれ、100歳を間近に控えても元気に生活している。高齢者の所在不明が話題となっているが、そんなニュースなどどこ吹く風。日野原氏の長寿の秘密は、なんと「うつぶせ寝」にあったという。以下、日野原氏の談。(週刊ポスト2008年3月21日号より)
大人が身体の疲れを癒すためには8時間の睡眠が必要という人がいますが、私は寝すぎだと思う。60歳以上の人が寝すぎると、骨粗鬆症が進行し、筋肉は衰えるというデータがある。余分な睡眠はかえって健康に良くない。
その点、私が実践している「うつぶせ寝」は、熟睡できるから短時間でいいし、様々な点で健康にもいい。私の睡眠時間は5時間ですが、「うつぶせ寝」だから毎日、快調ですよ。
そもそも脊椎動物で、あおむけになって寝る動物はいません。人間だけがあおむけで寝ます。脊椎動物の内臓はお腹を下に向けた時に自然な形になるように配置されている。人間が立って動く時、内臓は不自然な形になっている。だからせめて、寝る時ぐらいはうつぶせの方がいいですよ。
私は99年に研究会を作って、「うつぶせ寝」と健康の関係を調べてきました。
まず、あおむけに寝ると、舌の根元がノドにずり落ちて気道をふさぐ「舌根沈下」が原因で、イビキをかいたり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。また、立ったままの姿勢と同じく、筋肉が緊張しているので、腰や肩などが痛くなる。
ところが、「うつぶせ寝」だと、下を向くので舌根沈下は起こらない。実際、実践した多くの人から「その日からイビキが出なくなった」、「腰の痛みがなくなった」という声が寄せられています。
また、うつぶせに寝ると、胸が圧迫されたようになるから、自然に腹式呼吸になる。腹式呼吸は声楽家がする呼吸法。ヨガ、禅、丹田式の呼吸法に似ていて多くの酸素を取り込める。結果、血中の酸素濃度が上がり、血液がサラサラになるので、脳梗塞や心筋梗塞の予防効果も期待できます。