作家の嵐山光三郎氏は過去に『水木しげるの遠野物語』(小学館刊)を書評しているが、この原稿で衝撃の事実が明らかになっている。以下、嵐山氏の書評だ。(『週刊ポスト』2010年4月9日号より)
水木氏が柳田氏の『遠野物語』を漫画にするんだから、これは面白い本に違いないと思って書店へ行くと、どの店でも売り切れだった。増刷を待って入手して読むと、やっぱり面白いという。
「この本は企画の勝利ですね。水木氏は漫画の終りに柳田翁の亡霊と対話し、『自分もずい分、参考にさせてもらいました』とお礼を言っている。
水木氏は妖怪専門だが、柳田翁は妖怪のほか、神様を登場させている。山神、幸福を呼ぶオクナイサマ、病気をなおすゴンゲサマ、富をもたらすザシキワラシ、蚕の守り神オシラサマ。
妖怪と神様は紙一重で、オシラサマは、馬と夫婦になった娘である。『遠野物語』に『娘此(この)馬を愛して夜になれば厩舎(きゅうしゃ)に行きて寝(い)ね、終(つい)に馬と夫婦に成れり』とあるところは色っぽいシーンとなり、全裸の娘が『ああ愛しき夫よ・・・・・・』と馬をまぐわう」
水木漫画でそういったシーンが再現されるところが見どころだといい、『遠野物語』のお色気シーンが水木氏のタッチで再現されているのは一部の人にとっては興奮だろう。