プロ野球や巨人の話題が盛り上がると、必ず注目を集めるのが読売グループの渡辺恒雄氏の発言だ。2004年にセ・パ1リーグ構想を宣言した際も、野球界に関する話題の中心にはナベツネ氏がいつもいた。(週刊ポスト2004年8月27日号より)
ベテラン記者として長年にわたり渡辺氏を取材してきたあるスポーツ紙のデスクは、しみじみとこういう。
「何が何でも巨人が中心。自分の思うようにならないと我慢ができないことを隠そうともしない居丈高な発言に、腹を立てているファンも多いでしょう。でも、そんなオーナーだからこそ、われわれ記者にとっては格好の“メシの種”なわけです。失言、暴言は数知れず。奇行とも思えるハプニングもあり、これだけエピソードに事欠かない人物も他にいないでしょうね」
時々刻々と球界の風向きが変化する昨今。各紙は連日“渡辺番”を読売新聞本社の車両出口に張り付かせ、渡辺会長の専用車を徹底的に尾行。夜毎熾烈なカーチェイスが展開されている。
そんなある日、専用車のボディを取材陣のカメラが傷をつけたのだ。取り囲んだ報道陣に、カメラのレンズがぶつかって傷ついた車体を指差しながら「二度としゃべらん」と言い放った後、
「相当クルマも傷つけられてだな、物理的な損害を受けとるんだ。損害請求をするから、覚悟して待ってろ!」とまくし立てた。
「二度としゃべらん」は渡辺会長の常套句だが、「この発言はあくまでポーズ」とあっさり見切るのは前出のスポーツ紙デスクだ。
「この台詞、今まで何度聞かされてきたことか(笑い)。よほど話したくない時は別ですが、いつもなら突っ込む黄信号で止まってくれたり、時には尾行しやすいように青信号でも路肩で待ってくれたりと、渡辺会長は意外と記者思いなんですよ。やっぱり、ご自身が新聞記者だったからでしょうね。クセが強いイメージから“渡辺会長番て大変そう”とよくいわれますが、番記者にとってそれほど大変な取材対象者ではないです。それに会食の場所も2-3か所に決まっていて割り出すのも楽ですしね」