敗戦から高度成長期までの総理大臣は、良くも悪くもふてぶてしかった。例えば、「安保反対というが、後楽園の野球は満員だ」と言った岸信介、そして「貧乏人は麦を食え」「中小企業の5人や10人自殺してもやむを得ない」と、問題発言を連発した池田勇人。しかし彼らには、そう簡単には折れない逞しさがあった。
『態度がデカイ総理大臣 吉田さんとその時代』(バジリコ刊)を記した早川いくを氏は、最近の総理大臣たちを「洗練されていますが、悪くいえば平板で、脱臭剤を振り掛けた感じ」と分析。そして、
「吉田、田中、岸などは金属でできているイメージですが、最近はプラスチック製が多いですね。素材が安っぽいので、ちょっと叩くとポキッと折れそう。だからすぐに発言を修正するし、考え方もよくブレる」と述べ、歴代昭和の宰相を評価している。
現在では考えられないような失言、暴言を吐いても、そう簡単には進退問題までには至らなかった昭和という時代。子供たちが「ソーリ大臣はエライ」と無条件で信じていた時代が、かつての日本にはあったのだ。
※週刊ポスト2010年9月17日号