国内

野中広務 小沢一郎の涙に「よくあんな器用に泣けるな」

 表には出ないものの、裏から政治の世界を動かす、民主党の小沢一郎氏の「闇将軍体質」はどこから来たのか、“仇敵”である野中広務氏はジャーナリストの松田賢弥氏に語っていた。(SAPIO 2010年6月9日号より)

 野中氏は、闇将軍・小沢の原点は、92年に金丸信・自民党副総裁(当時)が佐川急便5億円ヤミ献金事件を追及された時に遡ると指摘した。

 92年8月27日――。金丸は佐川急便ヤミ献金事件を報じた朝日新聞の記事(92年8月22日付)を受け、緊急記者会見を開いた。そこで自民党副総裁の辞任を発表したのだ。当時、野中は自民党総務局長を務めていた。

「その日は夏休みで、ちょうど私が党本部に詰めている当番の火だった。そうしたら午後になって、佐川急便ヤミ献金事件を会見で明らかにすると金丸さんの秘書の生原(はいばら)正久さんたちが言い出した。

 国対委員長だった梶山静六さんは、ヨーロッパに視察に行っていた。ロンドンでつかまて、金丸さんが会見すると言っていると伝えると『バカな、俺が帰ってからにしろよ』と言って声を荒げましたよ。
 
 私は、幹事長の綿貫民輔さんが16時頃に幹事長室に入ってくると言っているからそれまで待てと言った。なのに会見は15時半に始まってしまった。そして金丸さんは記者会見で、東京佐川急便の渡辺広康社長から5億円もらったことを認めるメモを佐藤守良さん(経世会事務総長・当時)に読ませたんだ」(野中氏)
 
 この会見を仕切っていたのは小沢だったと野中は言い、会見後も抵抗したという。

「会見直後(8月31日)の箱根の派閥の研修会で、小沢さんが『会長(金丸)の今後の取り扱いについては私に一任してくれ』と言ったから、私は『一任できない』と異を唱えた。この一連の経緯には不自然なものがある、という理由だ。

 だが、私が反対したあとも、小沢さんは金丸さんに直接、『何とか私に任せてください』と言って主導権を握った。まあ、金丸さんも小沢さんをかわいがり過ぎた」

 金丸の信用を小沢はどう勝ち取ったのか。その一端を窺い知るエピソードを野中は明かした。当時、事件の渦中にあった金丸の自宅で野中はこんな光景を目にしている。

「われわれはマスコミの目をかいくぐって、金丸さんの家に行き、麻雀をしたりして慰めていたんだが、ちょうどそこに小沢さんが来るということになったから私ら隠れて見ていたんですよ。

 そうすると金丸さんの前で、『私に任せてください。小沢一郎のバッジにかけて守ります』と涙をはらはら流しながら言うんですよ。よくあんな器用に泣けるなと思いました」

 金丸事件から約20年――。小沢のやり方で一貫しているのは、国民の監視に晒されている政治の表舞台ではなく、裏側で隠然たる影響力を行使してきたという点だ。それは、一言で言うなら小沢の“闇将軍体質”だろう。

関連記事

トピックス

中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
主演女優として再ブレイクしている安達祐実
《『家なき子』から30年》安達祐実が“子役の壁”を乗り越え、「2度目の主演ブレイク期」へ 飛躍する43才女優の今を解説 
NEWSポストセブン
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン