「中古住宅を購入後、固定資産税などが未納だったことがわかりました」…そんな悩みが弁護士の竹下正己氏のもとへ寄せられた。
【質問】
中古住宅を買いました。きれいに掃除され、すぐに住める状態に見えたので、買って住みはじめたところ、しばらくして、これまでの固定資産税などが未納だったことが判明しました。買うときに確認しなかったのが悪かったのですが、こちらが払わなければならないのでしょうか? アドバイスをください。
【回答】
あなたが固定資産税を納税する義務はありません。納税するのは売主です。その売主に対して、あなたが税金を負担するかは契約次第です。固定資産税は、地方税法に基づいて、毎年1月1日における不動産などの所有者に課税される市町村税です。所有者とは、賦課期日に不動産登記簿、または固定資産課税台帳に所有者として名前が登載されている人です。
実際の所有者が違っていても、登記簿などに出ている人が納税義務者になります。納期は毎年4期に分かれていますが、1月1日の所有者に1年分が賦課されます。
いちいち本当の所有者を調査したり、年の途中で所有者が変わった時期で1年分の税金を割り振っていたのでは、事務が煩雑すぎるため、このように画一的に処理するのです(台帳課税主義)。
不動産を買って所有権の移転登記をすれば、登記所から市町村に連絡がいき、固定資産課税台帳の所有者が変わります。従って、中古住宅を買った場合、その年の固定資産税は、元の所有者に課税されます。買主が納税する義務はありません。
そして、登記を済ませていれば、課税する役所に対して自分の所有権を主張できますから、売主が税金を支払わなくても、購入した不動産は滞納処分を受けることなく安心です。
普通は売買契約で予め固定資産税などを日割り清算するなどにし、その支払い方法についても合意します。そうした契約条件があれば、買主は負担せざるを得ません。しかし、分担の約定がなければ、もともと売主が負担すべき税金ですから、応じる必要はありません。
今後、売る場合には、固定資産税の負担について忘れないようにしてください。宅建業者が仲介に入るときは、そのことも契約条件の一つになるでしょう。
※週刊ポスト2010年10月8日号