北朝鮮との間で緊張が高まると必ず議論になるのが、「先制攻撃」「敵基地攻撃」の是非である。“専守防衛”の原則のもと「先制攻撃は憲法違反だ」と指摘されることもあるが、本当にそうなのか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は「先制攻撃は法的には可能」とした上で、「しかし日本には、もっと重要な、やるべきことがある」と語った。
*****************************
先制攻撃をめぐる議論は、近年では2006年7月、北朝鮮がテポドンを含む7発のミサイルを発射した際に額賀福志郎・防衛庁長官(当時)が「独立国家として一定の枠組みの中で最低限の敵基地攻撃能力を持つという考え方は当然のこと」と述べて話題を集めたことが思い返されます。
この発言は「憲法違反ではないか」と批判を浴びましたが、結論から言えば、法的には「先制攻撃」も「敵基地攻撃」も可能なのです。憲法9条第1項には「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書かれています。
言い換えれば、戦争と武力行使を放棄するのは、「国際紛争を解決する手段」という条件の下でのことであり、憲法のこの記述は武力行使の一切を禁じたものではないのです。 「自衛」のための武力行使は、あらゆる国に認められているいわば「自然権」であり、当然、日本にもあります。仮に北朝鮮からの攻撃により逼迫した状況になれば、それを叩くのは「自衛」以外の何ものでもありません。
※SAPIO 2010年10月13・20日号