大使館が立ち並ぶ高級住宅地、東京・代官山の一角に、高級賃貸マンション『ラ・トゥール代官山』が竣工した。「シリーズ最高峰」と謳われるだけあって、平均専有面積は240平方メートル、平均月額賃料は181万円だ。
中でも注目は、専有面積500平方メートル超、月額賃料531万円の部屋。ここにはおそらく一生縁のないであろう、家賃7万円、駅から歩いて20分、広さ17平方メートル(洗濯機置き場なし)のワンルーム記者が、期待に満ちあふれながら内見してきました。
エントランスホールでは、24時間体制でサポートをしてくれるコンシェルジュがお出迎え。すでに場違いな雰囲気が漂う。
「お客様はコンシェルジュが、居住者の方に取り次ぎます。荷物を部屋まで運ぶポーターサービスもあります」(住友不動産関連事業本部賃貸住宅事業部部長、永山貴氏)
目的の500万円ルームへ。キョロキョロしながら長い通路を進み、エレベーターに乗ると、映画館のような大きなドアの前へ着く。えっ、まさかここが部屋?
玄関だけで車1台入りそうなくらい広い。広すぎて、靴をどこで脱げばいいかわからない。とりあえず隅で靴を脱ぎ、揃えておく。
室内は93平方メートルのリビングをはじめ、16人がけのテーブルセットが入るダイニング、総ガラス張りの風呂など、見所満載。記者の友人全員を呼んでバーベキューパーティができそうなテラス、執事用の控え室まである。“靴箱(シューズインクローゼット)”だけでも記者の部屋にある荷物すべてが入りそうだ。
ちなみに敷金は4か月分、礼金は0だ。敷金だけで2124万円!
一体誰が住むんですか?
「外国の企業の日本支社長さんや大使館の関係者を想定しています」(同前)
私が、友達100人とシェアしてもいいですか?
「きちんと手続きをしていただければ、お断わりする理由にはなりません。ただ、そういった想定はしていませんが……」(同前)
ふと、担当者の手元を見ると、ハンカチを使ってドアノブを握っている。畏れ多くてもうドアも開けられなくなった。変な質問してすみません。
すでにこの部屋には数十件の問い合わせが来ているという。お金はあるところにはあるらしい。
気を取り直し、間取り図に目をやった時、衝撃の事実に気づいた。自分の部屋はクローゼットどころか、玄関より狭かった……。
※週刊ポスト2010年10月8日号