9月上旬に予定されていた北朝鮮の党代表者会が延期されたが、その背景には金正日の「認知症進行」があるという。様々な角度からその情報を得た関西大学経済学部教授・李英和が解説する。
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認知症の進行に関しては、米国の自由アジア放送が8月7日に興味深い事実を報道した。1回目の訪中直後の5月中旬、「金正日の急な指示で中央放送委員長が復職した」と報じた。
彼は昨年7月に金正日の逆鱗に触れて解職され、建設現場で「再革命化」作業の最中だった。金正日は自分が解任した事実をすっかり忘れ、逆に「なぜ解任したのか」と激怒して復職を命じたという。同放送は「金正日委員長の予測できない行動に平壌の幹部たちが不安を覚えている」と伝える。
この不安こそが、会議を延期した真の原因なのだろう。金正日は、政治的には判断力を大きく損なった。だが、医学的にはまだ存命である。そのことが北朝鮮の意思決定過程を複雑化させている。
かりに金正日が絶命すれば、事態は単純化して好転するかもしれない。だが、後継者問題を含めた権力闘争が振り出しに戻り、北朝鮮情勢の先行きは不透明化する。関係諸国だけでなく、平壌の幹部たちが今、3年前に動き出した金正日の「認知症爆弾」を急いで処理する必要に迫られている。
※SAPIO 2010年10月13・20日号