米国は夏頃から、中国政府に向けて「人民元切り上げ」の圧力を高めている。
人民元は現在、管理変動相場制がとられ、円・ドルのように市場の需給関係によって為替レートが変動するのではなく、中国政府が為替をコントロール下に置いているのだが、米政府や議会、米国民は、人民元が対ドルで不当に安く設定されており、そのために米国製品の競争力が落ち、国内の工場が減るなど雇用が奪われていると不満に思っているのだ。
いざ人民元高になれば、円は「連れ高」になる傾向がある。05年7月には、元の2.1%切り上げが発表されたが、わずか4時間で対ドルで約3円も円高が進んだ。
為替、金融問題に詳しい信州大学の真壁昭夫・教授はこう説明する。
「欧米からすれば、中国同様、貿易黒字国である日本の円は同じ“アジア通貨”という認識。世界的に見ても、ユーロと英ポンド、オーストラリアドルとニュージーランドドルなど、地域が近く経済状況が似ている国の通貨は連動して売り買いされる傾向がある」
実際に切り上がらずとも、「元切り上げ」圧力が高まっていけば、円の「先高感」が強くなり、円高が進む傾向があるというのだ。
※週刊ポスト2010年10月8日号