今、日本で最もアグレッシブな経営を展開する企業の筆頭は、「ユニクロ」ブランドを擁するファーストリテイリングだろう。グローバル化を目指し、「英語の社内公用語化」でも注目を集めているが、それにはどんな意味があるのか、大前研一氏が分析する。
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会社をグローバル化するにあたってのユニクロの課題は「人材」だ。この点では、同業のスペインのZARA、スウェーデンのH&M、アメリカのGAPが有利である。彼らはみんな、国籍や人種によらないシステムを持っている。
それに対してユニクロは、外国人の採用を2010年度は全世界で300人、2011年度は同700人、2012年度は同1200人と徐々に増やしていく予定だという。店長以上の役職にある社員は今後、国籍に関係なく世界中の店舗に赴任することになり、そのために2012年3月から社内会議や文書で使う言葉を英語に統一する「英語の社内公用語化」の方針を打ち出している。
しかし、外国人の採用を増やしたり、店長経験者を海外に派遣したり、英語を社内公用語化したりするだけでは、まだグローバル企業とは呼べない。会社の組織を日本の本社を頂点としたピラミッド・ストラクチャーではなく、フラット化しなければならないのだ。
逆に言えば、グローバル企業において一番いけないのは「マウント・オリンポス・メンタリティ」である。つまり、オリンポス山の神殿(本社)から神様が下々にお告げを出すというやり方だと、世界中の様々な国籍の人々が混ざっている組織は、絶対にうまく動かないのだ。優秀な人は、オリンポス山の神殿にひれ伏さないからである。それぞれの店舗がすべて世界の中心であり、お客様こそが神様です、という「始めに現場ありき」のメンタリティが必要なのだ。
そしてそのためには、組織構造を完全にフラットなネットワーク型にするとともに、人の採用・評価・報奨・昇進システムを国籍や人種によらないフェアなものにしなければならないのである。これは「言うは易く、行なうは難し」だ。
ユニリーバやネスレなどグローバル企業の歩みを見ると、多国籍化が完成するまでには最低でも20年かかっている。そういう意味では、ユニクロはまだ、グローバル化に向けて第一歩を踏み出したに過ぎないのである。
※SAPIO2010年10月13・20日号