厚生労働省の村木厚子氏の裁判で、検察は不都合な調書を破棄し、事実とは異なる供述を誘導し、果ては証拠を改して、無実の者を有罪に仕立て上げようとした。――検察はなぜ暴走するのか? 去る9月に実刑が確定して失職、間もなく収監される鈴木宗男・前代議士、そして検察の裏金問題を告発した直後に逮捕され服役した三井環・元大阪高検公安部長が語り合った。
――村木裁判により、検察に対する国民の不信が高まっている。検察捜査をよく知るお二人に、なぜそんなことが起きるのか聞きたい。
鈴木:私の事件は、そもそも「鈴木宗男を潰せ」ありきで始まった捜査でした。検察も必死だったと思います。当時、私の前に三井さんが逮捕され、検察の裏金問題が注目されていた。検察は私を逮捕することで話題を逸らしたかった面もあるでしょう。
三井:鈴木さんは連日、北方4島支援事業で私腹を肥やす大悪人といわれていましたよね。でも、蓋を開けてみれば、国後島のムネオハウスやディーゼル発電施設に絡む事件ではなく、はるか昔に起きたやまりん事件で逮捕された。贈賄側の時効が成立しており、それまでは立件することはありませんでした。時の政権の意思が色濃く反映されたと思います。
鈴木:私も政治判断だと思っています。当時の小泉政権の中では、私は抵抗勢力といわれていた。1に鈴木宗男、2に野中広務、3に古賀誠。この3人がビッグ3でしたからね。
三井:そもそも、やまりん事件はその4年前に釧路地検が動いて立件できなかったもの。でも、世論は「極悪人の宗男を逮捕しろ」という雰囲気だったから、検察は何かをやらなければならなかった。だから、昔の事件をもう一度掘り返した。
鈴木:何しろ、私が逮捕される前日まで、NHKをはじめすべてのテレビ、新聞、週刊誌が「宗男は北方領土人道支援関連で逮捕される」と報じていた(苦笑)。検察のリークによって私のイメージが作られ、報道で増幅されていく。
三井:本当なら検察はムネオハウスで逮捕したかったのでしょう。でも、事件性がないとわかって、取ってつけたような事件で逮捕したわけです。
※週刊ポスト2010年10月15日号