――「脅せば簡単に屈する日本」でいいのか
「尖閣での譲歩は北方領土に飛び火する」語るジャーナリストの櫻井よしこ氏は、尖閣諸島問題に関する民主党が置かれた状況を危惧しながらも、わずかながらも光明を見出しているようだ。
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菅首相は政策を先取りする能力やビジョンを欠くために、問題や現象が起きる度に手を打つ、つまり常に後手後手になってしまう。円高に対して経済界や国民から怒りの声が上れば、円高に介入する。中国が怒れば慌ただしく船長を釈放する。尖閣諸島問題で国民の怒りが高まると、改めて『わが国固有の領土』といい始める。自分に向けられた批判をかわすことしか頭にない。支持率という私益はあっても国益がないのだ
民主党政権には、本当に失望以外の何もないのだが、それでも民主党内の新たな息吹きに、私は光明を見る。長島昭久氏ら43名の民主党衆参国会議員有志が9月27日、<国益の旗を堂々と掲げ、戦略的外交へ舵を切れ!>と題した「菅政権への建白書」を提出した。そのまえがきには<今回の結末は、日清戦争後の三国干渉に匹敵する国難である。日本国の政治家、いや、日本国民として、まさに痛恨の極みである>と書かれている。この認識を原点にしてこそ、日本再生の課題に取りかかることができるだろう。
また、松原仁氏ら73名も、<国際社会において日本の敗北と位置づけられており、このことによる今後のわが国外交の権威の失墜は耐えがたいものである>とし、スジの通った対応を政府に求めた。両グループにまたがっている議員もいるが、民主党の約4分の1の国会議員が声をあげたことの意味は大きいのである。
9月28日には、沖縄県議会が日本政府の対応に抗議し、中国に対して領海侵犯をしないよう求める抗議決議を行なった。まさに目前で展開されている中国の横暴を再確認した。沖縄県民の危機感が、普天間を含む米軍の基地問題への理解につながるだろうか。眼前の危機をどのように乗り切るか、冷静に考えなければならない局面であり、沖縄県民の考える力も試されているといえる。
※週刊ポスト2010年10月15日号