尖閣諸島漁船衝突事件の影響もあり、日中関係が悪化している今だが、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は中国との対話の必要性を説きつつも、韓国にも理解をしてもらうことが必要だと説く
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韓国国民の負の イメージ払拭も可能 中国とは、対立するだけではなく、「戦略的な対話」をしなければなりません。そのためにも日米安保体制を強化して、日本の立場を強めておくべきです。しかし、民主党政権が誕生してからは、前述した「米韓との軍事的役割分担」などの安全保障上の議論が停滞し、国家の防衛に対する視点も欠落してしまったかのようです。
憲法上は可能なはずの「先制攻撃」「敵基地攻撃」や、その攻撃能力保有に関する議論を「しない」ということは、北朝鮮の暴発の可能性を放置することにもつながります。「先制攻撃・敵基地攻撃は憲法違反だ」という固定観念に縛られ、「北朝鮮からのミサイルは日本の上空で撃ち落とすしかない」と考え続けるとしたら、有事の際には本当にミサイルが飛んできて、多くの被害をもたらすことにつながりかねません。
逆に、日本が「先制攻撃」に関する議論を冷静に行なって、米韓と安全保障に関する話し合いを進めれば、北朝鮮に対する抑止力になります。肝要なのは、「日本は、領土的野心はない」と普段からアピールしておくこと、そして、「国際社会から求められればその責務は果たす」と表明することです。
北朝鮮有事の際に、韓国から「日本の自衛隊の力を借りたい」という要請があれば、それに100%応える。そうすることで、韓国国民の心に根強く残っている日本に対する負のイメージを払拭し、真の絆を深めることができます。
しかし、今の民主党政権は、「その時」になったら、どうするでしょうか。先ほど申し上げた中国の領土拡大への目論見も踏まえた上で、政権を担う政治家たちはこうした大局的な安全保障の視点から、一刻も早く議論を深めていくよう、努力すべきです。
※SAPIO 2010年10月13・20日号