独居老人が増え続けている一方でこれをチャンスと捉え、様々なビジネスが展開されている。身辺整理、遺品整理、共同墓、話し相手サービスなどなど。なかでもこれから需要が多くなりそうなのが「死臭消しビジネス」だ。ノンフィクションライターの窪田順生氏が紹介する。
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あまり経験のある方は少ないだろうが、腐乱死体が発する匂いというのは凄まじいものがあり、一度こびりつくと数か月もの間消えないこともある。
にもかかわらず、異臭どころか、まったくの無臭にする方法がある。腐乱死体や自殺死体がでた家屋を清掃、消臭、消毒によって原状回復を行なう「特殊清掃」を業務とするA&Tコーポレーションの高江洲(たかえす)敦社長が試行錯誤を繰り返し、独自に開発したバイオ消臭剤だ。
独居老人の増加によって活況といわれる「無縁ビジネス」。故人の形見分けから家具の処分までを行なう遺品整理業をはじめ、ひとり暮らしの老人宅を訪れて「話し相手」になるサービスや、電話やインターネットを駆使した安否確認端末の販売……、様々なビジネスが台頭するなかで、これから間違いなくニーズが増えていくのが、この「死臭消しビジネス」だ。
厚生労働省の「21年国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯962万3000人のうち、48.1%(463万1000世帯)が単独世帯。つまり、独居老人である。
誤解を恐れずに言えば、孤独死をして、腐乱死体となる恐れがある高齢者が460万人もいるということなのだ。
これらのうち一軒家の人はまだいい。死臭がこびりついても住人が亡くなったのだから解体すればいいだけの話だが、問題はアパートやマンションで亡くなる人々だ。ほかの住民もいるので、おいそれと解体はできないし、家主や不動産業者にしても「死の痕跡」をきれいさっぱり消し去り、新たな入居者は迎えなくてはいけない。そこで求められるのが、「死臭消しのプロ」だ。実際、「特殊清掃」に参入する業者は年々増えているという。
※SAPIO2010年10月13・20日号