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FD改ざん告発した女検事が直面した検察社会の女性差別

「正義の番人」と呼ばれた者たちが責任を押しつけ合う姿はあまりに見苦しい。大阪地検特捜部が押収したフロッピーディスク(FD)のデータ改ざん事件。主任検事・前田恒彦容疑者(43)が証拠隠滅容疑で逮捕されたのに続き、改ざんの報告を受けていたとされる大阪地検特捜部前部長ら2人の幹部が犯人隠避で逮捕された。

幹部による隠蔽の有無を明らかにする上で、鍵と見られているのが、FD改ざんの事実を幹部に告発した女性検事・Aさん(41)の証言だ。

特捜部は東京には検事が約40人いて、3班に分かれ、派閥も存在する。一方、大阪は総勢13人。そのため派閥もなく、特捜部内どころか、検事は皆知り合いで、刑事部、公安部と、部署が違っても皆一緒に飲みに行く。

ある司法記者はこう語る。「前田容疑者がFDの改ざんを同僚検事に漏らしたのも“身内意識”からで、自分をかばってくれると思っていた節がある」

そんな身内意識の強いなかで、Aさんは「関西検察」の人間とはいえない存在だった。東京地検に初任官し、浦和地検、松山地検、東京地検などを経て大阪地検に勤務。“よそ者”として扱われていたのは確かなようだ。

司法記者が続ける。
「大阪地検は“事件は作ればいい”という気分が強く、生真面目な性格のAさんはその雰囲気になじめなかったのではないか」

また、男社会の検察にあって、女性という点でもAさんはマイノリティだった。現在、女性検事は全体の2割程度。特捜部の検事はわずかしかいない。司法修習生でAさんと同期の女性弁護士はこう証言する。

「私たちが任官した当時は、司法修習生の検察希望者に“女性枠”があるといわれていました。どんなに優秀であっても女性は限られた人数しかとらないということです。研修の時は、“セクハラに対する耐性を見るため”と称して、セクハラ発言が平気で行なわれていた。今でも“女はいらない”という考えが一番根強いのが検察です」

関西検察の馴れ合いに染まることなく、また、男社会の「常識」の外にいて、しかも正義感が人一倍強かったAさん。だからこそ、上司の前で涙を流すほどの激情で、仲間を告発することができたのではないか。

現在、Aさんは母親でさえ連絡が取れない状態が続いている。「今回の報道を見て、心配して娘の携帯に『生きてるの? 連絡をちょうだい』と入れましたが、返事はありません」(母親)。勇気ある告発の行方は――。

※週刊ポスト2010年10月15日号

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