1990年代、焼酎『よかいち』のCMで一世を風靡した、書家・榊莫山氏が10月3日、急性心不全のために死去した。84歳だった。インパクトのある風貌と、書道に独自の表現世界を切り開き、大人気となった莫山先生が“書”に対してどんな哲学を持っていたのか、本人の言葉で紹介する。(週刊ポスト2006年11月24日号より)
「書家で才能のあるようなやつ、すくないで。群れる才能はすごいけど。
仲間内で展覧会やって、典雅ですな、優雅ですな、くらいしか評する言葉を持たん同士が褒め合うてる。むつかしい漢字を続け字で書いて、そんなん誰も読めへんやろ。かしこい言葉を書くほど人は離れていく。だから僕はみんなが読めてにこにこしたり、エエなあと思うてくれる字を書くねん。他は誰もせんけどな」(榊莫山氏)
そういって、莫山先生は、野口英世の母・シカの手紙、お地蔵様の前掛けのマジック書きなどを、魅力的な字として挙げていた。