大前研一氏と日本を代表する企業経営者・柳井正ファーストリテイリング会長兼社長が本音で語り尽くした話題の対談集『この国を出よ』(小学館刊)。この最新刊の中から、刮目すべき2人の発言を、いち早く紹介する。
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【今が最後の分岐点 大前(第1章 絶望的状況なのに能天気な日本人)】
今の日本は「ミッドウェー後」とそっくりです。冷静に考えれば負けるとわかっているのに、それを認めようとせず、「まだ大丈夫」「最終的には神風が吹いて勝てるだろう」と思い込んでいる。(中略)今が最後の分岐点であり、剣が峰だという危機感で、勇気ある一歩を踏み出さなければなりません。
【政治家の資質 柳井(第2章 誰がこの国をダメにしたのか?)】
菅氏だけの問題ではありません。この国をどうしたいか、信念とそれを実行に移す力を持っていない政治家が多過ぎます。選挙の風向き次第で右顧左眄して公約が腰砕けになるのであれば、それは「政治家」ではなく、ただの「選挙屋」ではないでしょうか。
【若手起業家たちの限界 柳井(第3章 変化を嫌う若者だらけの国を「日本病」と呼ぶ)】
僕は、20~30代のベンチャー企業のトップが参加するパーティーやイベントに顔を出す機会がありますが、彼らと話していると「名刺交換だけを目的に来ているのではないか?」と感じることが少なくありません。企業のビジョンや信念が伝わってこなくて、「お金儲け」のことばかり考えているように思うのです。「稼ぐ」ことと「儲ける」ことは、違います。(中略)
IPO(株式公開)で数十億円の資産を手にしたり、売上高が数百億円レベルになると、それだけですっかり大企業の経営者になったと錯覚してしまう。数十億円の資産があれば、もうそれ以上は人生で使いようがありませんから、志がなければ、死にものぐるいで経営を続けようとは思わないでしょう。
※SAPIO2010年10月13・20日号