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落合信彦氏 なぜ「脱北者はウソをつく」がわからないのか

 なんの成果もなく「税金の無駄遣い」と批判を浴びた7月の金賢姫の訪日。日本政府は、なぜこんな愚行に及んでしまったのか。それは、日本政府が「北朝鮮で生活していた人物たち」の特性を理解していないからだと落合信彦氏は分析する。

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 私は、これまで脱北者たちの取材をしてきた経験から、北朝鮮から逃れた人間は「時にウソをつく」ということを理解している。かつてソウルでインタビューした、朝鮮労働党作戦部のエリートだった脱北者がその典型だった。彼は私の取材に対しては、「拉致された日本人には会ったことがない」と証言していたのだが、後にその証言を翻した。突然、「私は拉致された日本人女性に会ったことがある」と言い始め、世間の耳目を集めようとしたのである。その話のクレディビリティが低いことは言うまでもない。

 とはいえ、私は脱北者たちが最初から「世界中を騙してやろう」などと思っていたとは考えない。

 20世紀を代表するアメリカの芸術家であるアンディ・ウォーホールはかつてこう言った。「15minutes of fame」誰でも15分間は有名人になれると。人生の中で、華やかなスポットライトを浴びる瞬間に誰もが巡り会う。だが、それは長くは続かない。

 脱北者たちは、北朝鮮を逃げ出した直後は、その証言が注目され、メディアからも重宝される。ところが、話すことがなくなると、もう注目されることはない。そうなると、再び脚光を浴びたいという欲求に駆られ、「実はまだ話していないことがある」と言い出す輩が出てくる。次々に新しいことを口にすれば、周囲からのアテンションを獲得し続けることができると考えるのだ。

※SAPIO2010年10月13・20日号

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