<日本人はなぜ、才能がないと思いたがるのか?>
来日して12年。世界的マリンバ奏者にして作曲家、近年は武術家や教育者としても活躍し、『運命を変える才能の見つけ方 デュボワ・メソッド』(マガジンハウス)を上梓したフランソワ・デュボワ氏は、かねて疑問に思っていたという。同氏は語る。
「自分はごく普通のサラリーマンで、才能なんてとてもとてもと、謙遜する気持ちは私もわかるんですよ。 ただ、そういう物言いが日本人の場合は板に付きすぎているというか、個々の才能を伸ばす以前に世間的に好ましいとされる態度を優先してしまう。それではその人なりにあった才能のタネも芽を出せません」
よって『運命を変える才能の見つけ方 デュボワ・メソッド』では、まず<才能がないという発想を捨てる>ことが大事だと説く。< “才能のある人”と“才能のない人”を隔てる小さいけれど大きな誤解>とあるように、本書のいう才能はあくまで括弧つきだ。
その有無にばかり囚われ、伸ばすべき才能を伸ばそうともしない謙虚で慎み深い日本人に、才能との格闘を繰り広げてきた多才の人は優しくも手厳しい。
「私が日本に来てとにかく驚いたのが“歌手もどき”“俳優もどき”が多いこと。でも昔の映画を見ると全くそんなことはないし、歌えない歌手や演技のできない役者をタレントと呼ぶようになった近年の才能に関する誤解が、おかしな状況を生み出しているのではないかと。
特に最近はテレビでも何でも共感や親近感が重視され、あれがタレントなら自分もなれると安易な勘違いが増長する一方、その人に本来備わる才能はほったらかしにされる。それこそ宝の持ち腐れです」(デュボア氏)
構成■橋本紀子