「借地権を相続するにあたって、大事なことを教えてください」…そんな相談が弁護士の竹下正己氏のもとへ寄せられた。
【質問】
兄夫婦が借地に家を建てて住んでいますが、病気の兄が亡くなったら、義姉が借地権を引き継ぐことになります。借地権を相続する際、地主との交渉で大事なことは何でしょうか。また、家を改築する場合に地主の了解は必要ですか。その場合、地代は高くなるものでしょうか。
【回答】
相続の際、借地権は被相続人から相続人に移転します。ところで、借地権は、地主の承諾なく譲渡できません。譲渡承諾料などを支払って、認めてもらうのが普通です。
しかし、相続による移転は譲渡ではありません。地主に断わらなくても借地権の相続ができ、地主との交渉は必要ありません。とはいえ、借地人が相続で変わったのに、賃貸借契約上の借地人の名義が元のままでは、将来の混乱を招きます。建物の相続を届け出ておくべきです。
次に、借地上の建物の改築ですが、もし契約書に、地主の承諾なく増改築してはならないとの特約(増改築禁止特約)があれば、無断で改築すると契約違反になり、契約解除されかねません。事前に承諾を求める必要があります。
また、木造をコンクリート造り等の堅固建物に変更する場合も同様です。承諾料を支払って認めてもらうことになりますが、地主の承諾がない場合、裁判所に地主の承諾に代わる許可を求める手続きを取ることができます。
裁判所は、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮して判断します。認める場合には増改築の程度に応じて、借地人に更地価格の3-5%程度の承諾料の支払いを命じます。条件変更の場合は10%くらいになります。その際、借地期間が伸長されたり、地代の増額を認める場合もあります。
こうした増改築特約がない場合や条件変更に当たらない場合には、制限はありません。しかし地主が改築に異議を述べたときは、将来更新するときに争いになります。
借地には古いものがたくさんあります。平成4 年に今の借地借家法が成立しましたが、それ以前の借地契約の更新などには旧借地法の適用がありますから、専門家の助言を受けるようにしてください。
※週刊ポスト2010年10月15日号