若者が集まる東京・渋谷では、“均一居酒屋戦争”が勃発している。センター街を歩けば、「全品270円」などと書かれたのぼりが何本も目につく。全メニューを300円以下の均一価格に設定した低価格居酒屋は、渋谷だけでなく全国で出店ラッシュを繰り広げている。激烈な安売り合戦の中、ワタミはこの8月、ビールやカレーなど全メニューの7~8割を250円で提供する新業態の居酒屋「仰天酒場 和っしょい2」1号店を東京・五反田に開店。その狙いと勝算はどこにあるのか、渡邉美樹会長に聞いた。
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--ワタミも低価格店を出店したが、安売り合戦に参入したということでしょうか。
「乱立している低価格居酒屋にお客さまの一部が流れてしまったのは事実ですが、同じことをやるつもりはない。低価格居酒屋のブームで顕在化した新たなニーズに対応するということです。実は低価格居酒屋は、居酒屋だけでなく、立ち飲み屋の顧客も奪っている。退社後に1杯だけ飲んで帰りたいとか、あるいは30-40分程度利用したいといったニーズが拡大してきているのです。そこで、ワタミとして出した回答が『仰天酒場』。プリペイドカード方式の料金支払いシステムやお客さまが料理やお酒を取りに行くセミセルフ方式を導入することで、『和民』でなら1皿400円の料理を250円で提供できるようにした。『和民』とは方向性が違いますが。料理やサービスの質は落とさないということです」
--昨年2月には「和民」でビールの値下げを実施されましたが、効果はありましたか。
「ビールを値下げしたら、客数は増加しましたが、客単価が下がるので、結局、売上は横ばいでした。実験的に何店舗かでビールの価格を20円値上げしてみたら、不思議なもので、客数は少しだけ落ちるんです。まるで神さまが“今年の『和民』の売上はいくら”とパイを決めているかのよう(笑)。しかし、ビールを値下げするとそのしわ寄せが料理に及ぶので、今後は元の価格に戻し、料理の質を上げる方向に転換する予定です」
(渡邉会長の「邉」の字は正式にはしんにょうの点が1つ)
■聞き手/清水典之(ジャーナリスト)
※SAPIO2010年10月13・20日号