ライフ

仕事をしない「年金詐欺パラサイト息子」を親が叱れぬ理由

 戸籍上は「生存」しているのに所在がわからなくなっている100歳以上の高齢者は23万人。「行方不明老人」問題は、長寿大国ニッポンの裏側を炙り出した。親が死んでも届け出ずに、年金を受け取り続ける、年金詐欺といった問題をも引き寄せる。同居したまま働かずに、親の年金をあてにする“年金パラサイト”。「パラサイト・シングル」や「格差社会」などの言葉を広く浸透させ、家族をめぐる問題について考察を加えてきた山田昌弘・中央大学教授が、その実態を紹介する。

******************************

 年金パラサイトしている子供にとって、“金蔓”(かねづる)である親が老人ホームにでも入居してしまうと、自分が食えなくなる。介護などできなくても、とりあえず一緒に暮らし続けるため、いざ介護が必要となった親をどう扱っていいかわからずに放置するという形で虐待が生じてくるケースはままある。

 同居したまま働かない息子を叱咤せず、そのあげく放置や虐待をされて親はなぜ黙っているのか、と疑問を感じる人もいるだろう。

 親の側が声をあげて助けを求めることができない理由は、こんな子供を育ててしまったという親の“罪の意識”に関わりがある。

 私が関わった年金パラサイトの親の事例では、息子は多少の仕事には就いていたが、自宅にいると、親を叩くなどの暴力行為がたびたびあった。ところが驚いたことに、その親の相談は、「もし私が死んだら、この子はストレスをどこで発散すればいいのか」ということだった。

 親の側には、同居したまま働かない我が子に対し、こうなってしまったのは自分の育て方が悪かったからだという自責の念がある。それが、SOSを発するブレーキとなってしまっているのだ。

 しかも、こうしたお年寄りには、例外なく“超高齢者の罠”がある。

 罠とは、年を取るとともに、必然的に友人、知人の数が減っていくことを意味する。同世代で分かりあえた相談相手が物理的に少なくなり、孤立してしまう。体も弱り、外出にも不自由が生じるようになる高齢者が、新たに若い友人を持つことは、極めて困難であろう。

 生前の虐待や放置に留まらず、年金を掠め取るために死んでからも放置されるのでは、たまったものではない。

※SAPIO2010年10月13・20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン