経営コンサルタントの大前研一氏とファーストリテイリングCEOの柳井正氏が上梓した共著『この国を出よ』(小学館刊)。同書がテーマとする日本経済再生の処方箋とは。
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迷える管理職を象徴するようにP ・ドラッカーの書籍がベストセラーだ。ドラッカーといえば日本型経営の真髄を言い当てたことで知られる。終身雇用など職の安定こそ経済的変化を乗り切る要因とする提言は、世界中で評価された。
だが大前氏はこの現象は「古典回帰」の一つであり、<世の中が“ドラッカー回帰”していると見るのは早計>だと述べる。当今のブームは日本だけの現象であり、世界経済の潮流がそこに向かっているわけではない。
むしろ昨今の現場では、ドラッカー理論が網羅してきた領域がバラけてきたと大前氏は見る。90年代以降の学者や経営者たちは、状況に応じたマネジメント論を展開させ、人々も関心を寄せているからだ。
<その意味では、“現代の語り部”は、領域が専門化して分業化していると言えます。今、経営とビジネスの世界は、百家争鳴の様相を呈する「ポスト・ドラッカー」時代に突入しています>
ビジネスの根幹たるドラッカー理論は現代でも尊重されるべきだ。が、その哲学を応用するための新たな知識の習得も欠かせない。
※週刊ポスト2010年10月15日号