尖閣諸島中国漁船衝突事件について「日本は1ミリも屈してはならない」とジャーナリスト・櫻井よしこ氏は訴えた。そして、中国が尖閣諸島沖でガス田の掘削を始めたら日本も対抗して掘削の準備に入るべきだと説く。
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今回の事件が私たちに教えてくれるのは、戦後の国防体制を根本的に再考しなければならないということだ。日本国憲法の前文に謳われている「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」などの言葉は全くの虚構であることに目覚めよと、この事件は告げているのだ。
日本の国のあり方を根本的に変えていく努力とともに、眼前の危機脱出のための具体策をとられければならない。まず速やかに中国船が意図的に衝突してきた証拠映像を公開することだ。中国国内では日本の巡視船が体当たりしてきたと大々的に報じられ、国民は日本が悪いと信じ込んでいる。彼らに、非は漁船側にあること、そして尖閣諸島を中国領だと主張することの不条理さを伝えることだ。
それでも今後、中国の漁船は領海内に必ず侵入してくるだろう。いま、尖閣周辺に居坐る中国の漁業監視船を海上保安庁の巡視船が監視している。中国側は折を見て三桁の数の漁船を尖閣の海に繰り出してくるだろう。その時に領海、領土への侵入を阻止するためにも、海域の警備を強化し、同時に、尖閣諸島に警察を配置するべきだ。
また、中国は東シナ海のガス田にも必ず手を伸ばしてくる。中国は船長の逮捕直後、「白樺」に掘削用のドリルパイプと見られる機材を搬入。その周辺には数千トンクラスの大型船も含めて10隻の船が集まっている。すでに掘削を始めている可能性は高い。
仮に中国側が掘削を始めたなら、日本もすぐに対抗して試掘の準備を始めるべきだ。当然、中国側が船(実質的な軍艦)を出して阻止に動くだろう。その時には海保のみならず、海上自衛隊を派遣してでも、日本は試掘を断行しなければならない。話し合う体制を作るには、日本も独自に開発を進めて、中国と同じラインに立たなければならない。
一連の原理原則なき外交で日本が失ったものは極めて大きい。だが、日本人が中国の脅威と異常さをより切実に受け止め、国家、国益は自分で守らねばならないと認識するとすれば、不幸中の幸いである。
災い転じて福となす。そのためにも日本は国家としての基本固めを急ぐことだ。
※週刊ポスト2010年10月15日号