現在、銀座の百貨店で7年連続売り上げ1位を記録しているのが、松屋銀座本店だ。
「うちは東京ローカルなので、特化した商品を置いていることが好調の理由でしょう。高品質なものを目の肥えたバイヤーが選んでくる。ほとんどのブランド店において、店まかせにせず、バイヤーがお客様に好まれる商品をブランド側に求め、よりニーズに応えられる体制にしています」(松屋広報課)
同店の紳士服担当バイヤー・宮崎俊一さん(44才)は、イタリア語を独学で習得。経費節減のため通訳もつけずに、独自ルートでミラノやパリに毛織物メーカーの紳士服の生地を直接仕入れに行く。
「直接生地を買いつけることで円高メリットを最大に生かした形で、他の百貨店の同等品の4分の1以下で提供できるようになりました。安さを目指すのではなく、値段以上に価値のある商品を売り続けることが百貨店の信頼だと思っています」(宮崎さん)
独自開発に舵を切ったのは2000年から。ものが売れなくなって余剰在庫ができ、安い商品を買ってほしいと参入してくるメーカーが出てくるのを見て、「果たしてこれでいいのか?」との思いから決断したという。
「百貨店のオリジナル商品には、百貨店ごとに個性があるんです。うちではひとりの職人がすべてを縫い上げる“丸縫い”の商品も扱っており、品質には絶対の自信をもっています」(宮崎さん)
ブランドや商社まかせで百貨店が「個性がない」といわれていたのは、もう過去のことかもしれない。銀座という街自体が変化していくなか、銀座の百貨店は懸命に輝きを保ち続けようとしている。
「地域一番店は維持していきたいですが、新宿や渋谷などとの地域間の戦いもあります。他の百貨店さんも一緒に盛り上げて、銀座にお客様がたくさんいらっしゃるようになればいい。ファストファッションや駅ナカなど、違う業態の店も増えてきています。もはや百貨店のライバルは百貨店ではないのですから」(松屋広報課)
※女性セブン2010年10月21日号