国内

「スカイツリーは陳腐な名」「ネットばかりするな」と元教授

 加賀乙彦氏は1929年東京都生まれ。東京大学医学部卒。東京拘置所医務部技官を務めた後、犯罪学研究のためフランス留学。帰国後、上智大学教授などを歴任。著書に『不幸な国の幸福論』(集英社新書)など多数。その加賀氏が嘆く。

******************************
 最近の政治家が自分の教養をひけらかすために、やたらとカタカナ英語を使いたがるのにも腹が立つ。これも長い米国支配で、日本人の心の中に染み込んだ弊害といえる。「アジェンダ」なんて連呼されて、国民の誰が分かるだろう。

 政治家がその調子だから、国民の間でも日々、美しい日本語が汚されている。世界で最も高い電波塔を建てるのに、「スカイツリー」なる陳腐な名前が付けられたのもそうだ。日本は言霊の国で『源氏物語』や『万葉集』には素晴らしい表現力を持った言葉がたくさんあるのに、言葉に対する無感動、無関心が人々のつながりまで空疎化させてしまっているのではないか。

 私は作家だから、特に言葉の乱れが気になるのかもしれないが、言葉の問題も基地存続による自然破壊も実はセットになっている。日本人にいちばん伝えたいのは、「日本に生まれたことを誇りに思うこと。それは日本が世界に誇る美しい言葉と風土を大事にすることから始まる―」ということ。誇りが失われれば絶望感ばかりが表面化して幸福は遠のくばかりだ。

 特にこれからの日本を動かす若者たちには強く言いたい。家に籠ってインターネットやメールばかりやっていたのでは、偏った情報や意見に振り回される結果にもなる。傷つくことを怖れずに、もっと外に出て人と深く関わり、個人としての主張や立場を守りながら希望を持って世界を広げていってほしい。それが不幸な国が幸福になる第一歩といえる。

※週刊ポスト2010年10月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン