本誌インタビューにて、「3つの欲-金銭欲、物欲、性欲に日本人が飲み込まれてしまった」と語った石原慎太郎東京都知事。「金銭欲」に支配された者は、年金を不正に受給するため親の死を隠し、「性欲」に支配された者は、彼氏とセックスするのに邪魔だからという理由で子供に暴力を振るう。多くの日本人が金銭欲、物欲、性欲に溺れ、家族の連帯を断ち切った結果、こんな事件が巻き起こる社会になってしまったのだと都知事は語った。では、一体どうして欲望が日本人を飲み込んでしまったのだろうか。石原知事に話をきいた。
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【質問】なぜ欲望に支配される社会になったのでしょうか。
【石原】日本人の精神が戦後65年かけて、「平和の毒」に侵されてしまったからでしょう。有史以来、平和とは、犠牲を払って獲得するものです。日本人だって、戦前まではそうしてきた。無血革命と言われた明治維新でさえ、少なからぬ血が流れている。
ところが戦後、アメリカにこの国は骨抜きにされてしまった。アメリカは自由の国を標榜しているが、その国が日本にしたことは、例えば、1万冊近い本を発禁処分にすることだった。彼らは、自分たちの利益に適う国にするために、徹底的に抑圧し、日本人の考え方そのもの、いわば「価値の基軸」を崩したのです。
だが日本は、誰も声を上げなかった。唯々諾々と従い、アメリカの妾として過ごしさえすれば、何の犠牲も払わず平和が手に入る状況をむしろすすんで受け入れてきた。日本の平和とは、アメリカの愛人手当のようなものだ。
犠牲なき平和を享受し、堕落した日本人は公に奉仕することを忘れてしまった。家族のため、公のため、国のために行動するという心がない。誰かに任せておけばいい、という発想になってしまった。するとどうなるか。残ったのは「自分のため」という個の欲望だけだ。
※SAPIO 2010年10月13・20日号